
大阪に日帰りで行ってきた。
目的は友だちに会うこと、そのためだけに新幹線で往復6時間以上かけて行ってきた(最寄駅から東京駅まで小一時間かかる)。およそ8年ぶりの大阪は懐かしくて暑さすらエモーショナルだった。
入院でできた友達
今回会いにいったのはKちゃん。Kちゃんはわたしが阪大病院の整形外科病棟に入院していた時にできた友達で、出会いはお互い車椅子+病院着+すっぴんの状態だ。車椅子に乗って互いの病室を覗きにゆき、談話室スペースで長々話していたのが懐かしい。
入院中に仲良くなったもうひとりの股関節仲間、Oさんは12年ほど前に肺がんで亡くなってしまった。二度目の人工関節置換手術を受けたあと、なかなか骨が人工関節に定着せず長く入院していた。原因が肺がんであることがわかったのは、置換手術から半年も経ってからのことだった。
大学病院に入院しているとはいえ、医師は専門外のことまで想定に入れて検査はしてくれない。ひどい話だ。
明るくお茶目なOさんはジャムパンが大好きな食いしん坊で、四人部屋のムードメーカーだった。わたしが楽しく入院生活を過ごせたのもKちゃんとOさんのおかげで、Oさんの携帯の番号をわたしは未だにスマホから消せずにいる。
Kちゃんはわたしより10才近く年下だったが、妙に老成しているのに素直で愛嬌のある性格で、義理に厚く礼儀正しい子だった。
気難しい元・夫も彼女のことは気に入っていたので、Kちゃんとは退院後も何度か会ったりしていた。しかしわたしが離婚して東京に戻ると行き来もなくなり、いつしか連絡も取り合わなくなってしまっていた。
スマホのキャリアを戻したら連絡先も復活
ところが今年の春、突然Kちゃんから着信があった。
ドキドキしながら出てみたら「キャリアを以前使っていた会社に戻したら、当時の連絡先情報の一部も復活してん!姉(※わたしのこと)のも復活したから電話してみてん〜!」とのことだった。
こうやって電話をしてくれるありがたさよ。2時間ぐらい話し込んで「Kちゃんに会いに大阪ゆくわ!」と決めた。
大阪といえば肉。

どこか行きたいところはありますかとKちゃんに訊かれたとき、わたしは躊躇わずに「焼肉!」と言った。
関西に暮らしていた頃は、安くて美味しい焼肉屋さんによく行ったものだが、東京ではほとんど行かない。なぜなら東京の焼肉屋は高い。やたら高い。味と価格の釣り合いが悪すぎる。安い店にゆくとゴムみたいなハラミを出してくるのも腹立たしい。大阪の焼肉屋さんで美味しい焼肉が食べたいんだ。
インバウンド客と出張のサラリーマンで満員ののぞみを新大阪で降り、JR在来線との乗り換え口へと向かう。
そこでKちゃんが待ってくれていた。記憶の中のKちゃんはギャル味のあるコだったのに、すっかり落ち着いたお姉さんになっていた。あたしがおばさんになるはずだわと改めて年月を噛み締める。
再会の喜びと興奮できゃあきゃあ言いながらUターンして御堂筋線へ向かう。涼しい地下鉄に揺られて、Kちゃんが見繕ってくれた焼肉屋さんへ。
お肉はとてもおいしかった。上タン塩から始めてテールスープで〆た。ミスジが驚くほど美味しく、ハラミは赤身の旨みがしっかり感じられて最高だった。牛の尻尾の骨を「コラーゲン摂りたいお年頃やん?」としゃぶる女ふたり。お店の人、すみませんでした。
日本鈕釦別館へ

焼肉屋の次は日本鈕釦(ちゅうこう)さんの別館へタクシーで向かう。だってあんまり暑いんですもの。
日本鈕釦別館は船場センタービル2号館にあり、拍子抜けするほど売場があっさりしている。が、品揃えとお値段が非常に良い。円安の今、こんなお値段であれこれ買えるなんて天国だわ。
日本鈕釦は小売もしてくれるが基本的に問屋だから卸売が本業だ。本館で何かを買うためには小売であっても会員登録が必要となる。その点、別館は会員登録なしで買える。SAFECOのインテリアファブリックに一目惚れして1メーターだけ買った。本当は5メーターぐらい欲しかったが、先日アフリカ布を買ったばかりで在庫布が増えている。いかん、いかんぞ。
日本鈕釦にはChuko Onlineというオンラインショップもある。
しかし店頭にある商品が全てオンラインで買えるわけではない。まして布は実物を見て買いたい。オンラインショップでは服飾やハンドメイド関連の副資材が豊富だから、手作りが好きな人はぜひ覗いてみてほしい。
谷六でひと休み

場所をカフェに移してまたKちゃんと話しこむ。カフェはレトロな照明や建具、中庭がいい雰囲気の「道勝(みちまさ)cafe」というところをKちゃんが見つけてきてくれた。谷町六丁目駅の出口からすぐの空堀商店街の中にある。
季節のパフェを食べたかったが、焼肉でお腹がいっぱいで入りそうになかった。というわけでベイクドチーズケーキとコーヒーをいただく。Kちゃんは赤肉メロンのシェイク(季節のフルーツを使っているので季節ごとにメニューは異なる)を注文していた。すごいボリュームのシェイクが出てきて「さすが大阪…」と感心した。

どっしり濃厚なベイクドチーズケーキは後味にほんのりレモンの香りが感じられて、爽やかな味わいだった。コーヒーはすっきりと上品な味わいで、ブラックですいすい飲んでしまった。
店員さんも感じがよく、近所にあったら足繁く通いたくなるような心地いい空間だった。私たち以外には、仕事の打ち合わせをしている男性ふたりと、二十歳前の若い女子ふたり連れとがいた。騒々しくなくてありがたい。こういう「町の喫茶店」文化が大阪市内では健在で羨ましい。
道勝の向かい側には立派な店構えの昆布屋さんがあった。
【こんぶ土居】さんというお店で、アミノ酸調味料不使用の美味しそうな昆布の佃煮がずらっと並んでいる。わたしは昆布が大好物なので、即座に山椒入りのものとおかか昆布とを買わせてもらった。色々みたかったが、17時台の新幹線に乗りたいので断念した。これはもうオンラインショップであらためて買い漁るよりない。

Kちゃんからお土産に茅乃舎のおうどんとお好み焼き粉をいただいた。さすが、わたしの食の好みをしっかりおさえてくれている。弱って何にも作りたくない時に食べることにする。
時間を割いてくれることのありがたさ
会わずにいた10年間はいったいなんだったのというぐらい話に花が咲き、楽しく過ごした1日だった。
こんな私でも喜んで会ってくれる人がいることにしみじみと感謝を覚える。
最近、時間こそ命そのものだと実感している。どんな大富豪でも1日は24時間しか持っていない。お金を使って時間を節約することはできても、増やすことはできないのだ。「貴重なお時間を割いていただき」とかいうけれど、その重みをどれほど自覚できているだろうか。これは単なる定型的な謝辞ではない。時間を使うことは命を使うことと同義だと思う。自分の命の時間を私と会ったり、話したり、何かを選んだり考えたりしてくれるために使ってくれるなんて、ほんとうに有難い。
今度は晩秋にKちゃんにまた会いに泊まりがけで大阪へゆくつもりだ。
「いつか都合がいい時に」とか「また今度」とかやっていると、あっという間に時が過ぎてしまう。時間があるうちに、そして、自分の脚で歩けるうちに会いたい人に会いゆきたい場所へこそゆかなくては。
