ファンを作る

特許事務の仕事をやったりやめたりしながら、10年ちょっとのキャリアになっている。
いくつもの事務所で働いてきたけれど、顧客から初めて名指しでお歳暮をいただいた。名指しで、というとなんだか大袈裟だな。普段担当してくれている事務の方々にと、名前をちゃんと別記して送ってくださったのだ。

メーカーの体質

日本の特許事務所のほとんどが、メーカーを顧客としている。
産業として電機・機械・化学系メーカーが多いし、そういう企業は特許出願をたくさんする傾向があるからだ。
わたしがこれまで働いてきた事務所でもそうだった。

メーカーからしたら外部の特許事務所は孫請けぐらいの感覚なんだろうと感じるような体験をたくさんしてきた。
わがまま言いたい放題で奴隷のようにこきつかってくる某大手メーカー、なにかあると事務所に詰め腹を切らせる責任逃れエンジニアの多い世界的な企業等、唖然となることも多かった。
わたしは今でもこれらの企業の製品は決して買わない。完全にアンチになってしまった。

人として扱ってもらう

顧客からしたら外部の特許事務所の事務員など路傍の石のようなもので、まともに扱ってもらったことなどない。事務担当者は理不尽な怒りをぶつけられてサンドバッグ状態になることもあるし、制度や弁理士への不満から、なぜか罵られることもある。
そしてそれが「普通」だと思って働いてきた。

が、今年、顧客から初めて人間として扱ってもらった感じがして、とても嬉しい。嬉しいことこの上ない。
送っていただいたものはたいへんかわいい商品ばかりで、あまりその分野に興味がないわたしでもすっかりいい気分になってしまった。日々の業務の中で「この会社の人たちはみんな感じのいい方々だなぁ」と感じてはいたけれど。

顧客と良好な関係性を築きエバンジェリストになってもらう過程に、「ファンになってもらう」というステップがある。ファンになってもらうためには魅力的な商品やオファーをと考えてしまいがちなんだけれど、その前にもっと大事なことがあった。
それは、個人として尊重されている感覚だ。
どんな業種での接客でも、融通も気も利かない木で鼻を括ったような対応をされたら腹立たしいものだ。逆に、苦情や素人質問も丁寧に聴いてくれて、一緒に解決策を考えてくれたり提案してくれたりしたら嬉しい。
あなたをひとりの人間としてみていますよと、具体的に行動で示すことの重要性を身を以て体験した出来事だった。