新しいことへの挑戦

knitting socks

つま先から編むやりかたで靴下を編んでいます。いつも履き口から編んでいたわたしには、新たなメソッドです。
Judy’s magic cast on方式でつま先から編み始め、毛糸はChameleon CameraのLeaf(廃盤)とOpalのたんぽぽを使っています。
ひとつ編み終えふたつめを編むぞとなったとき、ちょっと億劫になってしまいました。
靴下ってふたつ同じものを編むわけで、左右で編み方を変えるわけにはゆかない。もう1回チュートリアルビデオをみながら目をつくるのか…と、面倒に感じてしまったのです。

慣れ親しんだやり方やパターン、ツールを変えるのは思っている以上にハードルが高いみたいです。
お子さんでもパターンに固執する子もいるし、高齢でも柔軟な方もいます。だからこれに年齢はあんまり関係ないかと思っていました。が、個人的な実感としては年齢「も」関係ありそうです。

慣れているからやりやすいだけ

職場で新入社員の方にレクチャーすることがあります。おもしろいことに、たいていの人は新しいツールへの抵抗を示します。「前職でつかっていた〇〇のほうが便利です」とはっきり仰る人もいます。年齢が上がるにつれてこの傾向が顕著に出てきます。

うん、そうだよね。わたしもそういう気持ちになることはよくある。
だけど、それは「〇〇のほうがわたしにとっては便利です」ということではないかなぁ。

というのは黙っておいて、どの点がどんなふうに便利かを話してもらいます。だってほんとにそれのほうが便利かもしれないですからね!お話をきいてみて、「そちらのほうが事故のリスクが低そう」「作業精度と効率があがりそう」と感じたら、部署内でプレゼンしてくださいとお願いします。

しかし、不慣れなことに対する不安と抵抗だと感じられたり、事務所のポリシーとして選択肢がないケースもあります。そんな場合には「そうなんですね〜でもうちの事務所ではこれを使うんです〜」でいったん済ませます。慣れているからやりやすいということと、そのツールややり方が実際に優れているかどうかは別なことです。

やってみるからわかること

実物は画像よりもっと鮮やかな色です

ところで、話を靴下に戻すと、今回は一目ゴム編みの止め方も、初めての方法でやってみました。
靴下だから伸縮性が欲しいのに、セーターの襟ぐりや袖口によく使われる止め方だといまいち伸びが足りません。この不満を解決したくてフランス式の伏せ止めでやってみたら、こんなに伸びます。

もっと早くに知りたかった…。こんなに伸びてちゃんと元に戻るのなら、靴下には最適じゃないの。
なんでこのやり方が本に載っていないの。見た目の美しさとか正統性とかより、靴下に必要なのは機能性だよ。
羊毛文化の歴史がながい欧州の編みものメソッドは、合理的・機能的・おぼえやすいと三拍子揃っていますね。いつも感心します。日本の編みものは複雑すぎる。

わたしが参考にした動画をおいておきます。日本の手編みの本によくのっている一目ゴム編み止めは複雑で覚えられない、伸縮性が足りないと、不満に感じている人は参考にしてみてください。

複雑すぎてわかりにくい、できあがったものがつかいにくいというストレスがあっても、慣れから現状維持を選んでいました。知っているやり方・慣れていることは失敗しにくいから、だんだん保守的になっちゃいます。
たかが靴下の編みかたひとつであってもこうなんです。新しいことへの「挑戦」という表現がありますが、誇張ではなくてほんとうに「挑戦」なのですよね。
挑戦できる自分でありたいと思うと同時に、人が新しいやり方に抵抗を示しても共感できるようでありたいと思います。