綿ギャバジンのスプリングコート(1)

今年の春は早くから暑くなったと思いきや、いきなり肌寒くなったり、寒暖差が激しかった。
春先から梅雨ごろまで使える化繊のはおりものを持っていたのに、汚くなってしまったので数年前に捨てた。その後、折にふれてスプリングコートを探してきたが、カジュアルすぎたり素材がイマイチだったりで「これ」というものに出会えずに過ごしてしまった。

ちょっとはおれるものが革のライダーズジャケットぐらいしかない。いよいよ仕方がないので自分で縫うことにした。
最初はニッセイ商会さんのウェブサイトで見た馬布(ばふ)で作ろうとしていた。生地サンプルを取り寄せ開封した時に、「あれ。なんか似たような色合いの布を持っていたような気が…」。そう。17, 8年前に買った綿ギャバジンが引き出しの底にあったのだ。

綿ギャバジンのたたみ皺がとれない

ギャバジンは稠密な織物で雨風に強い。バーバリーの王道トレンチコート生地がギャバジンだ。私が在庫布として抱え込んでいたギャバジンは緯糸がターコイズブルー、経糸がベージュで織られている。持つとずっしりと重みを感じる。それほど密に織られているので、撥水性がある。糸と糸の隙間がないのだ。

だからたたみ皺をとろうにも、布に霧吹きで水を含ませることができず家庭用アイロンではとりきれなくなっていた。布の上でコロコロ転がる綺麗な水玉を眺め、「20年近く畳まれていたしギャバジンだし無理か…」と諦めた。

裏地は、ニッセイ商会さんで買ったヒョウ柄のジャカード生地を合わせる。ギャバジンが地味すぎてモチベーションが上がらないのを、ヒョウ柄でなんとかしようという作戦だ。

ヒョウ柄は阪神地区の生地店で買うに限る。バリエーション豊かで楽しい。

衿のパターンを補正

コートの型紙は以前aviverさんで買っておいたものを使った。が、縫い始めてすぐに自分の考えが安易であったと思い知る。
パターン通りに縫った衿は、表衿と裏衿の大きさの差がありすぎて、間にブカブカした空間ができてしまったのだ。でっかい餃子みたいで中身を詰める前提なのかな?っていうぐらいブッカブカで、爆笑してしまった。押さえミシンでなんとかなるレベルではない。

厚地用、普通地用ではパターンが異なる

私が買った型紙は、中肉〜厚手のウール素材で縫うことを前提としたもので、生地の厚み分を考慮した操作が施されている。
特にそれが顕著なのが衿だ。衿は複数のパーツで構成される立体的なパーツで、折り返した時に表衿が美しい形に反らならなければいけない。そのためのパターン操作はあたりまえ。ウールモッサやメルトン、厚手のツイードなどを想定して創られた型紙を、そのまま綿ギャバジンには使えるはずがなかった。

ここまで縫ったのに衿にてこずり待機中

裏衿が基準になるのが「普通」なのに

仕方がないので衿のパターンを補正する。
自分が製図したわけではないが、おおまかな理屈は解っている。コートやジャケットの場合、衿の製図をしたら、デザイン(この場合は衿の格好)、布の厚みや素材による特性を考慮してゆとりを加えた表衿用のパターンを作る。つまり、裏衿が基本形になる。
しかし、ここでチキンな私は「表衿の形を変えたくない。綺麗なラインと絶妙な大きさだし、見頃とのバランスを崩したくない」と考えた。だから操作されている表衿を基として裏衿のパターンを作ろう。

表衿は裏衿にゆとり分を加えて作られているはずなので、表衿のパターンを別な紙に移したら、適当なポイント3箇所に見当をつけ切り込みを入れて折りたたむ。そうやって長さを調整した。高さや下衿との切り替え部分のラインは、多分これぐらいというのを適当に操作した。製図をきちんと学んだプロからしたら卒倒ものだと思う。でも、売り物を縫うわけでもなし、痛い目を見るのはわたしだけだから、こんな野蛮なやり方を許してほしい。

試作の衿をふたつ縫う

厚みの似ている綿ツイルで試作品を縫ってみた。もちろん同じ生地で縫ったほうが正確性は増すのだけれど、ギャバジンが残りわずかだったから仕方がない。

もう少しストレスなく表衿が反って欲しい。首の横あたりから後ろにかけても浮かずに背中について欲しい。
試作品1号の反省を踏まえて製図の修正をし試作品2号を作り、よさそうだったので本番の生地で衿を縫って見頃につけた。生地もなんとか足りてホッとした。

どれだけアイロンをかけても取れないたたみ皺…

シームポケット

シームポケットは滅多に縫ったことがなく、縫うといつも袋布と向こう布を縫い合わせるところでガタガタになってしまう。わたしにとっては鬼門だ。しかしコートにポケットがないなんて不便極まりないから頑張る。

ギャバジンの硬さにここで助けられる。コバステッチがピッタリ決まった。

だが、ポリエステルジャカード生地の扱いと、曲線のロックミシンに手こずって、裏側はやはり無惨な感じになってしまった。

表側から見る限りは綺麗な仕上がり(に見える)ので本人は満足しています。いいんです。

ボタンホーラーで糸調子に手こずる

いよいよ仕上げの工程に入る。ボタンホールを開けてボタンをつけるのだ。
JUKIの職業用ミシンに、普段はブラザーのボタンホーラー(穴かがり機)を取り付けて使用している。(もしくは両玉縁のボタンホールを最初に仕込む)久しぶりにボタンホーラーを使ってみたら、きれいな穴かがりができない。
下糸調子や上糸調子を変更したり、複数のテンションの組み合わせで練習用の生地に開けてみるが、しっくりこない。上糸だけ太い番手の糸にしてみてもダメだった。

ボタンホールとボタンは、服の「顔」みたいなものだから妥協できない。

これはもう、手かがりのボタンホールを作るか、ボタンホールだけ処理してくれる業者に持ち込むか。
不器用な上に老眼が進んで手元が見えない状況だけれど、ボタンホールを自分の手でかがれるようになったら素晴らしくない?

というわけで55歳の手習で穴かがりに初挑戦する話を次回は書きます。