婦人服を縫う

百着ちかくのメンズシャツを縫ってきた。が、婦人服はそれほど縫っていない。
スカートやコートのようなものは縫っても、婦人ものの普段着は難しいからだ。自分の体型のイレギュラーさと補正の工数の多さに嫌気がさして、結局パターンをひくことは断念してしまった。せっかくスクールにも通ったのに。

日本ヴォーグ社『シルエットがきれいな、私の定番服』

最近、「シルエットがきれいな、私の定番服」というパターンブックを衝動的に購入した。(書籍の表紙等の写真は使用不可なので、こちらにはAmazonへのリンクを貼っておく。ヨドバシドットコムや楽天ブックスでも取り扱いはある)
これが久々のヒットだった。

この中から簡単で涼しいブラウスを同じパターンで2着縫い、ワンピースへのアレンジパターンにも手を出してしまった。

婦人服は縫う工程が紳士服とかなりちがう。メンズシャツに慣れて無意識に手が動いてしまうのを、おしとどめながらの作業はストレスでもある。でも工数は少ないので、慣れれば合間仕事でも半日でトップスを縫い上げられる。その手軽さが会社員にはありがたい。

プロバンス土産の布で縫ったブラウスの画像

これはただいま気に入ってるカフス袖のブラウス。若い頃に勤めていた職場の先輩がプロヴァンス土産に買ってきてくれた布で縫った。冷静に考えたら、お土産としていただいたのは、もう四半世紀前のことだ。大切にしまっていたので黄ばみや褪色もなく、肌触りがよく着やすい。いただいた時も、今も、わたしには少し可愛すぎるのではと思っているが、着てみると顔が明るく見えて夏にはぴったりだった。

年増だからこそ着られる色柄

こちらは30年前に、吉祥寺にあった「モミジ」という生地屋さんで購入したペイズリープリントだ。渋くて品のいい色柄に心を奪われ、110cm幅を5m購入した。組成は今や不明だが、手触りと匂いなどからポリエステルと天然素材の混紡だと思われる。
割引価格でも結構いいお値段だった。しかし、これは2度と手に入らない布だとわかっていたので思い切って買った。爾来、幾度もの引越しや大片付けの嵐をのりこえて、この布は大切なストックとしてしまいこまれてきた。

わたしも初老をとっくにすぎ(初老とは40歳を指すという残酷な事実の前に震えてしまう)、この渋い色味の似合う年齢になったことだし、満を持してワンピースに仕立てることにした。

狭い部屋では大ものは裁断するのも縫うのも一苦労だ。
うちはまるがわたしのやることに無関心で邪魔をしないから助かる。とはいえ、アイロン、まち針、鋏、糸など、猫にとっては危険なものばかりだから、裁縫をする時は気が抜けない。

ファスナーもボタンもポケットもないシンプルなワンピースで、あっという間にできた。…と言いたいところだが、実際にはアクシデント続きだった。裁断したスカート部分に謎の深い切り込みがあって焦ったり、ロックミシンの糸がいきなり1本切れてしまったり、織りが粗めで薄いが故にミシンの送り歯にひっかかって布が攣れたり、縫い糸がツルツルしたポリエステル糸で糸調子をとるのが難しかったり、いろいろあった。

ウエストにはゴムが入っている。その上からウエストリボンを結びウエストマークをアクセントにするデザインだ。
このリボンが曲者で、モデルさんがやっているように身体の横の方でゆるく結んで垂らすと、私の体型では「風呂上がりですか?」になってしまう。難しい。

仕方がないので後ろでキュッと結んでいるが、昭和だよなぁ。

布も昭和のものだし、わたしも昭和生まれだし、昭和レトロということでいいのか。