ミシンの話

近所にミシン屋さんがあります。地元密着タイプのミシン屋さんです。
いつからか、古い2本どりのロックミシン;baby lock(EF-205)がショーウィンドウに並んでいるんです。綺麗にオーバーホールされて14,000円という値札がついています。とおりかかるたびに横目でみて、気になっていました。

ロックミシンとは

ロックミシンは縁かがり専用のミシンです。布が裁断面からほつれるのを防ぐのが縁かがりです。家庭用ミシンならジグザグ縫いという機能で代用します。
わたしは直線縫いに特化した職業用ミシンと、ロックミシン・「衣縫人」を持っています。が、衣縫人の機能が充実し過ぎていてオーバースペック気味です。4本も糸を使うから糸交換も億劫だし、大きいから場所をとるし、普段は押し入れにしまっていて使用頻度は低めです。

わたしのロックミシンは物々交換でやってきました。
20年ほど前に洋裁ブログをやっていたころ、「あなたの3本どりのロックミシンとわたしの衣縫人を交換しませんか」と読者の方からご提案があって、交換していただいたものでした。
衣縫人はその当時で十数万円する、ハイスペックモデルのロックミシンでした。その方は、衣縫人を購入したもののそれほど便利に使えないと感じて、わたしの3本どりロックミシン(多分4~5万円ぐらいだったはず)と交換を希望されたのです。

その後、わたしはニット生地を縫うことに挑戦して挫折し、衣縫人の差動送り等の機能を使うことはなくなりました。

オーバースペックの「衣縫人」を手放してこれを買おうかな。そう思って縫い目をみせてもらいにお店に入ってみました。

JUKI baly lock EF-205の画像
メルカリに出品されていた同タイプのスクリーンショットですhttps://jp.mercari.com/item/m92373373878

ダウングレードするなと諫められた

​事情を話したら「そんなダウングレード、きいたことがない」と店主の方に呆れられてしまいました😅

「「衣縫人」はとてもいい家庭用ロックミシンだし、手放すのはもったいないです。「衣縫人」と「糸取物語」はどちらも家庭用ロックミシンとして使いやすくて、品質が素晴らしいんです。それ以外の機種とは段違いです。
このベビーロックの難点は糸調子の調整が難しいところと、上ルーパーの糸が洗濯などでほつれたらそこから一気に全部ほどけてしまう点です。糸数が少ない=使いやすいではありません。結構厄介なんですよ。
これを売りたくないわけではないけれど、「衣縫人」を活かしてください」と説得されました。

プロのアドバイス

「オーバースペックと仰るけれど、どういう点がオーバースペックなんですか?」と店主さんに訊かれました。
機能が多過ぎて使いこなせないし、布帛(ふはく)しか縫わないから不要な機能もたくさんある、糸調子がとりにくい、自動糸通し機能が死んでいて糸を通すのに時間がかかって不便だと正直に伝えました。

「使わない機能は使わなければいいんです。必要になったら使えばいい」
ごもっともです。
なんだろこれと思っていじったりするからいけないのだな。

「左針とって3本どりにしましょう。その方が糸も少なくて済むし、布帛なら十分です」
というアドバイスをもらい、ほえーとなりました。針、とっちゃっていいんだ!​

「糸調子はどこがおかしいかんじですか?」
左針の糸調子が変で、表からみていると綺麗な縫い目でも、裏からみるとつれているんですよね

「それはたぶんメインテナンス不足で糸調子の調整がうまくゆかなくなっているのだと思います」
​おお、そうなのか。掃除や見えるところだけしかやれていないし…そうなるかも

「ロックミシンの分解掃除や分解しないとみえないところの注油は自分ではやらないでください」
マジすか。危ない。動画みてやるところだったわ…

いわゆるセールストークばかりがセールスではない

店主さんはミシンの修理に関する経験と知識が豊富なのは一目瞭然でした。「うちでメンテしますよ!」とはおっしゃらず、事実だけ伝えるというスタイルではなはだ商売っけがない。
終始沈鬱な表情なのが気になりましたが、今後はここにメインテナンスをお願いすることに決め、職業用ミシンの消耗品をひとつ購入して帰宅しました。話して感じる信頼感のなせる技ですね。

ああ、でも、車がない。近所となるとかえって輸送が大変だ。今までは専用の段ボールに入れて発送すればよかったから、考えたこともなかったわ。

さて、この課題をどうクリアしましょう。