賃貸物件探しには気をつけろ(3)

多磨霊園の紅葉

不動産屋のとんちきな担当者の不確実情報にふりまわされながらも引越しを終え、新しい部屋での生活がスタートした。
しかし、この物件は広さや間取り、クロスなどはよかったのに残念ポイントがありすぎた。大家が物件を大事にしていなかったからだ。入居したばかりのわたしにはそんなことがわかるはずもなく、そこはかとない違和感だけ感じていた。

賃貸物件探しには気をつけろ(1)

賃貸物件探しには気をつけろ(2)

違和感その1・クリーニング真面目にやってないだろ

普通の賃貸物件なら、住民が退去し新たな入居者が越してくる前にクリーニングはきれいに終えている。はず。
入居する側からしたらいうまでもなく物件は清潔であってほしいし、格別な申し送りがない限り(クリーニングはしていない等)清潔なものだと思って引っ越してくる。

それなのにわたしの部屋はクリーニングのやりのこしがかなりあった。

まず風呂場と洗面所とトイレの水回りだ。素人だってもっとキレイにしあげるわというレベルであった。洗面台排水口の金具の周りに溜まった汚れを掃除するところから新生活がスタートしてしまった。排水パイプもなぜ掃除しておかないのだ。ピーピースルーを知らないのか。それに浴槽の水垢もとっておけ。ハウスクリーニングの初歩だろうにどういうことなんだと思いつつも自分で掃除した。
外に設置されたガス給湯器は油汚れ(台所の換気扇の排気口の真下にあった)と排気ガス汚れとホコリとでベタベタだったし、玄関タイルはいつ水洗いしたんだかわからない有様であった。タイルの目地は一部ひび割れて消滅し、タイルがグラグラしている箇所があった。

共用部分もいつも枯葉とか蜘蛛の巣とかで汚い。掃除が入った試しがない。耐え難くてわたしが時々掃除していた。
この物件は管理業者がおらず、大家が管理しているときいていた。大家は気がついていないんだろうか。

違和感その2・謎の業者がやってくる

入居してすぐあちこちにちょっとした不具合を発見してしまい、不動産屋に連絡をいれ修繕を依頼するはめになった。
不動産屋から大家に連絡が入り、大家から修繕を依頼された業者が派遣されてくるというのが「普通」だと思う。その際、間に入った不動産屋は「⚫︎⚫︎という業者さんにあなたの電話番号をおしえてもいいですか?」と形式的にでも確認するものなのだが、それすらなかった。

いきなり謎のおっさんから電話がかかってくるシステムだった。しかも名乗らない。

「もしもしー?あ、⚪︎⚪︎の201号室の人?修理のもんなんですけど、今そばにいるんでこれから行っていいっすかね」
「あ、え、はい。修理の方ですか。お名前をうかがってもいいですか」
「あー(不機嫌そうな声)イワサキです」
「イワサキさんですね。在宅しておりますのでよろしくお願いします」
ガチャ

いやガチャって。

そして15分ぐらいたってインターホンが鳴ったので室内から「どちらさまですか?」と応答するも、ここでもまた名乗らない。

「あー修理のもんです」

そこはイワサキやろうが。しばいたろか。

これが修理のたびに繰り返される。どの人がやってきても漏れなくみんな名乗らない。この物件に関わっている人間が「普通」ではないんだなとここで実感し、はっきりと「この物件はまずいぞ」とさすがのわたしも理解した。

出窓があって日当たりも良く、窓からは桜も見え、向かいにはパン屋があっていいところではあったのだ

ゴミステーションが不法投棄場所状態

私が生まれ育った小金井市はゴミの分別が非常に細かく、厳しい。大阪の北摂に越した時、「燃やすゴミ」「燃やさないゴミ」という「わしが燃やすと言うたら燃やす」という意気込みを感じる分別名に慄いた。小金井市では紙ごみですら可燃ゴミか資源ごみである雑紙または牛乳パックなどで細かく分別する。

今回のお部屋は小金井市の隣の府中市だったのだが、府中市のゴミの分別は比較的ざっくりしている。
それをさしひいても、あのマンションのゴミステーションは異常だった。

とにかく汚なすぎて行政指導が必要なレベルで荒れ果てていた。ゴミの袋を入れる大きなコンテナがあるのだが、分別がいいかげんだったせいで回収されずとりのこされたゴミの袋がいつもわんさかある。布ゴミは雨水を含み、プラごみは散乱し、空き缶のコンテナにはストロングゼロの缶が20ダース分ほど積み上がり、治安のヤバさが漂っていた。
乾電池の回収用に設置された容器はあろうことかタッパーウェアの本体で、そこに溜まった雨水に乾電池が浸かってオレンジ色の液体になっていた。絶対に身体に悪い。

そう、誰もこのゴミステーションを管理していないのだ。大家よ、管理費毎月3,000円とってるんだから仕事をしろ。

「24時間ゴミ出しOK!」と物件案内に書いてあった。

もうどこからつっこんだらいいのかわからない。

照明が落下

2021年6月24日、朝、食事を終えて猫家事をしていたときに寝室で「ドスン」という音がした。
驚いて覗いてみたらベッドの上に照明が落下していた。

引掛シーリングの金具とそこからのびる電線

天井に穴が空いている。照明の重みに耐えられず引っ掛けシーリグの金具もろとも天井の一部が剥落したのだった。
そんなことある!?照明にぶら下がったりしていませんよ?と唖然となり、またしても不動産屋に連絡を入れる。

やってきた修理業者(この人もはやり名前をいわない人だった)が天井を見上げ、
「ここの天井、石膏ボードだから照明が重いと耐えられないんだわ。」と言う。
「天井が石膏ボード」
「そう。石膏ボードだよこれ。だから裏になにも補強がないから照明は軽いものつけないと」
「裏に補強用のベニヤとか打ってもらえないんですか」
「木材いれるのはダメだね。消防法にひっかかっちゃうし、一箇所だけってわけにゆかない。そうなったらこの部屋全部の天井剥がしてやりなおしになるね」
「えー(絶句)」
「重い照明つけたらだめとか言われなかったの?」
「そんな説明、ひとつもありませんでしたね」
「あ、そう。ちょっと見せてみ(落下した照明器具を手に持ってみるおっさん) こりゃだめだよ。重すぎるよ。1kgもあるんじゃねぇ」

シャンデリアでもあるまいし、照明器具の重さを考えて購入しないといけないなんて(唖然)。
天井が石膏ボードだなんて。
大家、建材ケチったんだったら言ってよ!

こんな経緯があったので、二年と経たずにこの部屋からでることにしたのだった。

住めば都というけれど程度問題よね

そういえば、そこに意気揚々と引越した翌朝に、たまたま同じフロアの部屋の方と話す機会があった。
男性は犬を抱っこしながら「ここ、みんなすぐ引っ越していっちゃうんだよね。オレが一番長いかも。オレも4年しかいないんだけどね」と言っていた。

そりゃそうだろう。耐えられないんだよ…ゴミ捨て場がおそろしく汚いこと、共用部分が常に薄汚いこと、名乗らない男がのっそり修理に現れること、いきなりの安普請などに。
住環境はメンタルにも大きく影響する。汚いところに住んでいると自尊心が削られる。いくらペット可であっても、こんな掃き溜めみたいなところに住んでいたくないと感じるようになる。結果、数年で出てゆくのだ。

大家が物件を愛してちゃんと手をかけてくれているところでないと、「管理業者はいなくて大家さんが管理しています」というところは要注意だ。大家がケチりまくってスラム化している物件もあるぞ!というお話でした。