2024、とまだ打ち慣れていないというのにもう2月です。
おそろしい。毎年言ってる気がしますけど、おそろしい。
昨年10月に受けた健康診断でひっかかり、大腸の内視鏡検査を近所のクリニックで12月に受けました。ポリープがあり、組織をとって病理検査にまわしてもらったところ、放置しないほうがいいタイプということがわかりました。5年〜10年かけてがん化してゆく可能性が高いものということでした。
正直、「え〜!めんどうくさい!」と思いましたが、まぁ仕方がない。切除手術に対応している地域の基幹病院に紹介状を書いてもらって、先日、切除してきました。
ポリープの切除手術は特殊な手術ではありませんが、いざ自分のこととなるとちょっと及び腰になりますよね。どんな体験をするかは個人差も大きいと思います。10代後半に虫垂炎の手術を受けた50代女性の例として書き残しておきます。消化管にポリープのできるお年頃の、同世代のみなさまのお役にたてれば幸いです。
ポリープ切除手術までの流れ
(1)まずは診断
わたしは大腸内視鏡検査でポリープの位置と数を近所のクリニックで確認後、別の病院の消化器内科を紹介されました。
しかし、紹介状があるからといってじかに手術の予約がとれるわけではありません。1回診察を受ける必要があります。(大きな病院にありがちなことなのでしょうが、診察をしてくれた医師と手術担当の医師は別でした。ちょっと不満。)
(2)内視鏡手術の日程を決め、説明を受ける
消化器内科診察時に手術の日程を決めたら、その足で血液検査を受け、内服薬(下剤)を院内薬局で受けとります。加えて、ふたたび消化器内科にもどって内視鏡検査の流れや注意点の説明動画を視聴しました。そのあと、看護師から手術の説明がありました。所要時間は全部で90分といったところです。
その日の歩数は1万歩を超えていました。院内をとにかく歩きまわることになります。病院にはスニーカーでゆくべし。それと、採血に備えて袖口がのびてもかまわない服装をお勧めします。
また、手術を受ける場合は緊急連絡先が二箇所必要です。一箇所は必須、二箇所めは任意だそうですが、病院としては二箇所書いて欲しいそうです。一人暮らしはこういう時が大変ですね。
(3)内視鏡手術前日から食事の内容に指定がある
手術前日の朝食から、食べていいものについて細かい指定があります。めんどk…いえなんでもありません。
消化のいいもの、柔らかいもの推奨で
・食べていいもの:うどん、鶏肉、豆腐、白身魚等消化しやすいもの
・食べたらいけないもの:繊維の多い野菜、根菜類、きのこ類、こんにゃく、雑穀米、海藻、キウイやイチゴ等ちいさな種のある果物
と説明書に書いてありました。干瓢巻きとか一発アウトです(繊維&海藻)。
水炊きなんかいいんじゃない?と思ったら大間違いです。白菜・しいたけ・白滝がいけません。
アルコールもNGリストに入ります。そして手術前日の20時以降は絶食(飲水はしても支障なし)です。
(4)そのほかの注意点
⚫︎重要事項説明書や同意書以外の書類がないかをみること
わたしが受けた病院では、下剤の説明書き等とともにホチキス留めされた書類一式を渡されました。書類を何枚かめくると、排便の状態を手術の6日前からチェックして申告することになっていました。
大きな病院では、説明をうけてから手術までに数週間あくので、これを見落としてしまう人もいるかもなぁと思いました。
⚫︎診察時にお薬手帳は必ず持参する
手術1週間前から普段服用している薬が服用中止になる可能性があります。お薬手帳を持参して看護師さんに確認をとってもらうのが双方安心です。ここでいう薬には目薬も含みます。目薬は盲点でした。
⚫︎サプリメントは2週間前から服用中止
なお、サプリメントは手術の2週間前からすべて服用中止となります。亜鉛とかビタミン剤ももれなく服用中止です。
手術当日
手術当日の東京は10年ぶりの大雪でした。わたしがなにをしたというの。
手術は15時からの予約なのに下剤(モビプレップ®️)の服用は朝7時からスタートでした。はやい。なんでこんなに早いのよ。
説明書によると「午前10時までに2リットルの下剤を飲みきれ」と書いてあります。
3時間もあるやんと余裕綽々のわたし。のちにこれがまったく余裕のない鬼スケジュールであることが判明します。
(5)下剤服用
⚫︎下剤を溶かすのは余裕をもって
モビプレップ®️は、粉末が大きなプラスチック容器に入っている状態で渡されます。服薬直前に自分で水で溶かすのです。真冬の早朝の冷たい水道水を計量カップで測り、容器に注いで粉末を溶かし…と、溶けない!
そうなのです。薬の説明書の後ろの方に「水が冷たいと溶けにくいことがあります。」とさらっと書いてありました。
そういうことは最初に書いて?
おばちゃん、キンキンに冷たいお水いれちゃったよ?
いうても薬なんだから溶けるでしょと思っていたのですが、モビプレップ®️は意外に手強かった。
ぬるま湯を少しずつ追加しては必死になって薬の容器をがっしゃがっしゃ振り、「まだ溶けない…」とがっくりくることをなんどか繰りかえしました。
「水が冷たいと溶けにくいことがあります。」だけでなくてさ、溶けにくい時はこうするといいよ、でもこれはやらないでねとか、対処法も書いていただきたい。余韻を含ませて終わりにするのやめてくれる?と、薬の説明書を書いた人、それにGOを出した人にむかって心の中で悪態をつきながら(八つ当たりです)、すべての薬を溶かしきったときには7時をすぎておりました。
こんなこともあるので、余裕をもって早めに行動するのをお勧めします。
⚫︎下剤はゆっくり飲む
薬の注意書きにも書いてあるとおり、約180ccの下剤を10分〜15分かけてちびちび飲みます。不味いから一気に飲み干してしまいたくなるのをこらえて、キッチンタイマーをかけて測りながら飲みます。
飲み始めてからしばらくするとお腹を下すのでトイレに籠ることになります。でも薬は飲み続けないとならない。しかもゆっくりと。もちろんトイレに籠っている間は服薬できない。いわゆる下痢ではないため腹痛はなく、「ん?」と思ったらどひゃーっとくる感じです。油断大敵です。
このくりかえしで時間をとってしまうので、3時間あっても押せ押せになるということが今回わかりました。
絶食をしているところにお腹を下すから体は冷えますし、脱水も起こします。わたしのように脂肪と筋肉ががっつりついているタイプでも冷えを感じましたので、痩せ型体型の方は気をつけてください。
お水と何も入れないお茶(ミルクや砂糖、レモン等は入れてはダメです)は飲んでよいので、口直しをかねてわたしは温かい烏龍茶を飲んでいました。以前、近所のクリニックで内視鏡検査を受けたときに看護師さんから教えてもらったのですが、烏龍茶をチェイサーにすると腸の中がはやくきれいになるそうです。
(6)着替えてスタンバイ〜手術
朝も昼も絶食でひたすらお腹を壊し続けて腸管の中をきれいにした状態で、病院へゆきます。病院によっては院内で服薬させてくれますが、今回はそうではなかったため「移動中にお腹壊したらどうしよう」とビビりました。(杞憂でした)
雪が本格的に降り始めたタイミングだったのでタクシーでいってきました。タクシーの運転手さんが良い方で、「うちの女房も入院してポリープをとった。3つほどあった」「ボクもついでに検査したけどボクにはポリープはなかった」等々お話ししてくれ、車を降りる際には「がんばってね」と送り出してくれました。
病院についたら受付を済ませ待つこと1時間半(長い)で順番がきて、別室に呼ばれました。そこでも看護師さんから手術前後の注意事項等説明を受けます。その後、手術着に着替えます。
更衣室はなく、回復室でカーテンをひいて着替えました。まさかとは思ったんですけど、お尻に穴が空いているズボンを穿き、着替えや荷物を大きなバスケットにいれて持ち運んで移動するスタイルでした。
更衣室やロッカーはないのか…合理的ではあるけどさ…と傘をもてあましつつ、手術着でおじいさんたちと中待合のベンチに並んで「ここに並んでいる人全員、尻に穴の空いているズボン穿いているんだよな」となんとも言いがたい気持ちで更に30分ほど待たされ、やっと手術室(というか検査室)に呼ばれました。
そこからはモノになった気分でした。
氏名と生年月日を確認されたのち、検査用のベッドに横になったら、左腕に血圧測定のバンドを巻きつけられ、お腹になにやら大きなパッドを貼り付けられ、右腕から鎮静剤を入れられます。この間およそ2分弱で、漫画だったらテキパキという音がコマに書かれているような手際のよさです。ただし、たいへん雑に扱われている感じはします。10年ほど前にうけた別な手術の後も、病棟の看護師さんからは雑に体をあつかわれたので、そういうものなんだろうと思います。繊細にやっていたら患者をさばききれないし、気持ちも疲弊してしまうのでしょう。病院にいるプロに優しさを期待してはいけません。
痛い。
鎮静剤を入れられると鼻先に強烈なアルコール臭を感じ、次に頭がグラグラして身動きがとれなくなります。体は動かせるけれど、動かすのに気合と時間が必要です。
しかし、麻酔と違って五感はしっかり働いていますから、内視鏡を腸に入れられれば違和感や痛み、気持ち悪さなどをクリアに感じるままです。全身麻酔にしないのは、痛い等の患者からのフィードバックが大事だからだそうです。たしかに、腸管突き破っちゃったりしたら大事故ですからね!
わたしは虫垂炎の手術の傷が癒着をおこしたせいで、内視鏡をいれられると癒着部分を中心に強めの鈍痛を感じます。その痛みのせいで終始「いでででで・・・おえええええ」となってしまいます。
イヤだなぁ、また大腸の終わりまで空気いれられながら進むのかと思っていたら、「今日はポリープを取るだけなので、大腸の最後まで内視鏡は入れませんからね〜」と医師からいわれてホッとしました。
そうはいっても異物をつっこまれていることに変わりはなく、痛いわ気持ち悪いわ鎮静剤でグラグラするわで、20分ほどの手術がとても長く感じられました。控えめにいって拷問です。ポリープを切り取る時は強く痛みを感じてイヤになってしまいました。
とらないわけないはゆかないから耐えているだけで、「全然平気!」とか「痛くないですよ!」とかとうてい言えません。ポリープのある場所によっても、おそらく切除する時に圧痛は変わると思います。
組織片紛失
痛いと呻きながらも切除が完了し、血圧測定用のバンドなどを外してもらったら回復室に車椅子で移動して(鎮静剤の影響による転倒事故防止)、鎮静剤が抜けるまで1時間を回復室で過ごします。回復室は大部屋でした。コンパクトなベッド(寝返りとかうてないサイズのもの。そのまま手術室につっこめるタイプのベッドです)が部屋の左右にそれぞれ5台ずつ並んで、カーテンで仕切られただけです。検査室と裏で繋がっているらしく、内視鏡検査真っ最中のお婆さんと医師との会話が丸聞こえです。プライバシーとは。
この回復室に次々と患者さんがやってきては去ってゆき、多くの医師や看護師がせわしなく働いていることを実感します。
そこで寝て15分ぐらい経った頃でしょうか。医師が現れて「切除した組織を紛失してしまった。すみません」というではありませんか。「切ったポリープを回収したはずが見当たらない。腸内を流した水を回収する容器の中もくまなく探したがやはり見つけられない。これはもう紛失と判断せざるを得ない。たいへん申し訳ありません。」という謝罪でした。
驚きと、鎮静剤の影響でまだ頭が回っていないのとでポカンとしてしまいました。
「ないのではしょうがないですねぇ。だけど病理検査に回せないですよね」と訊くと
「そうなんです。通常なら組織を病理に回して細かく検査をするのですが、それができません。でも、〇〇クリニックですでに病理検査はしてもらっていてガンではないことがわかっていますから、そこはご安心ください」と言われました。
うん。それはそう。
それはそうなんだけどね、釈然としないわ…
今回の手術の目的はふたつあって、ひとつはポリープを切り取ること、もうひとつはそのポリープがどういう性質のものかを精査してもらうことでした。目的の半分が遂行されないのでは切られ損です。
診療明細書を確認せよ
回復室で過ごす時間が終わると、看護師さんがやってきて動作確認をしてくれます。そして着替えて回復室をでたら手術後の注意事項を看護師さんが読み上げておしまいです。
手術2日後まではシャワーしか浴びられません。手術当日は絶食。翌日と翌々日までは固形物NGで、食べられるものに制限があります。カレーやキムチなどの刺激の強い食品、牛肉・豚肉のような油脂分の強いお肉は食べてはいけません。具沢山ミネストローネやさつまいもポタージュみたいな消化管に負担がかかるものもだめです。具のないコーンスープやインスタントのポタージュスープは食べてもよいそうです。
これも事前に渡された注意書きにかいてあったことでしたので、あらかじめ、うどん、卵豆腐、プリン、お豆腐、鶏肉、ヒガシマルのうどんスープなどを買っておきました。
自動精算機で会計:21,230円(社保・本人)のお支払いを済ませて、雪が降りしきるなかタクシーで帰宅しました。
その日、眠りに落ちる直前に「ん?待てよ。病理検査がないのに請求されてないだろうな?明日起きたら診療明細書をチェックしよ」とふと気になりました。翌日、確認してみたらがっつり請求されていました。
んもー。1,700点も点数加算されてるやん。五千数百円変わると思うでこれ。
病院にややこしい説明の電話かけないとならないやん。その電話料金もこっち負担やん。釈然としないわー!
と、心の中でひとしきりぶぅぶぅ文句を垂れて、「ま、でも、あの様子をみていたらすべて流れ作業だから無理もない。イレギュラーなことは発生しない前提でやっているからこういう誤請求がおきても不思議ではないよね。システムの問題だわ」と気持ちを切り替えてから電話をかけました。
電話をかけて事情を説明し、担当の課で調べていただいてから折り返してもらいました。朝8時半に電話をかけ、折り返しをもらったのが17時ちかくでしたので、おそらく手術を担当した医師や病理検査室にも確認していただいたのでしょう。
「もしあの後、採取した組織片が発見されて病理に回してもらっているのならラッキーだし返金不要で手間が省けるわ」なんて思っていましたが、そんなことはなく、過誤による請求で5,100円返金されることになりました。
保険をチェック
手術が決まったら、加入している保険の保障内容をチェックしてみるのもお勧めします。日帰り手術や大腸ポリープの内視鏡手術(正式名称は「内視鏡的大腸粘膜切除術」)をカバーしているかもしれません。
国民皆保険制度のおかげで、今回の負担額は大した額ではありません。が、保険金ですべてカバーできるのであればありがたいですからね。
身内も自分も大病や怪我をしたことがない人は、掛け捨ての少額の保険には加入していないこともあるでしょう。だけど40代以降になると婦人科系の病気のリスクは高まり、遺伝的な疾患も顕在化してきます。わたしの実感としては、無理のない範囲で加入しておいたほうがいいです。40代以降、入院手術1回、日帰り手術は5回も受けましたので。
ポリープ切除は本当に不愉快な体験ではありますが、受けた方がいいです。
今回「再検査しよう」「切っておこう」と即座に判断したのは、若い知人が大腸がんになったことが影響しています。誰もが元気で傷ひとつなく還暦を迎えられるわけではありません。親より先に死ぬのは避けたいなと思って治療しました。
健康診断で気になる数値があったら、しっかり再検査してください。