吉祥寺にあるミルクスタンドの武蔵野デーリーさんに行ってきました。全国各地のこだわりの牧場から仕入れた牛乳が飲める、東京で唯一のミルクスタンドです。製菓学校のすぐ近く、吉祥寺通りに面したお店です。
ミルクスタンドとは、牛乳を主商品とするスタンド形式のお店のことです。お店によっては軽食をだすところもありました。東京で現存するミルクスタンドは、ここだけかもしれません。(乳製品やアイスクリームなどを主力商品とする、自称「ミルクスタンド」はあります)
とはいっても武蔵野デーリーの木村さんは、元々は配達メインの町の牛乳屋さんです。今の業態は最近始められました。木村さんは実にこだわりの方で、会社員の傍ら、牧場を巡って様々な牛乳を飲んだり酪農家の方々のお話を聴いたりしてこられて…で、お父様と一緒にこのお店;牛乳のセレクトショップを始められたそうです。だから単なるミルクスタンドではなく、「クラフト」ミルクスタンドを名のっていらっしゃいます。
シングルオリジンの牛乳が味わえる
わたしたちが普段スーパーなどで手にする牛乳は、だいたいが合乳(ごうにゅう)です。合乳とは、複数の牧場の牛乳を混ぜて味を均質化したものを指します。たいていはJA(農協)がひきうけて合乳に加工施設で加工、パッキングして出荷しています。いわばブレンドですね。合乳には、牧場が加工設備を持たなくてよい・品質のばらつきがなくなるなどのメリットがあります。
しかし、牧場ごとの個性や牛の品種の個性、季節によって異なる味わいなどがかきけされてしまいます。
生産者さんの思いやこだわり、牧場のある場所(北海道、八丈島、高知などなど)、牛それぞれの個性を味わってみたいですよね。シングルオリジンの牛乳ならそれが可能です。武蔵野デーリーさんでは、シングルオリジンの牛乳を飲み比べることができます。そして、気に入ったら瓶で購入できるんです。
すごくない!? 利酒ならぬ利牛乳ですよ?ゴートミルクも扱っているし、お店の前で大興奮してしまいました。
加工処理によって牛乳の風味が変わる
牛乳といっても、搾乳しただけのもの:生乳(せいにゅう)は市場に出回りません。牛乳は安全性を守るための基準が非常に細かく、厳しく設定されている食品のひとつです。殺菌のために加熱処理されたものだけが流通しています。なお、殺菌をしなくても飲めるレベルでクリーンな生乳は「特別牛乳」という名称で売られていますが、非常に稀少です。
高温殺菌・低温殺菌・パスチャライズドってなに?
スーパーで見かけるような牛乳は、超高温殺菌(120℃~130℃で2秒間殺菌)がメインです。パッケージに「パスチャライズド牛乳」とあるものは、65℃で30分間または72℃で15秒間で殺菌した牛乳です。低温殺菌を謳ったものは65〜66℃で30分間の殺菌です。牛乳は加熱すると牛乳独特の匂いがでますよね。高温殺菌だといくら数秒でも、やはり牛乳臭さがでます。
脂肪球を潰すホモジナイズ
そして、ホモジナイズという加工も一般的です。ホモジナイズとは牛乳の脂肪球を高圧によって小さく均質化することです。
脂肪球の大きさが揃うことで加工や調理に向く牛乳になります。が、本来の風味は大幅に損なわれます。
味覚や嗅覚の感覚は人それぞれなので一概には言い難いですが、ホモジナイズド牛乳はコクが足りない味というのがわたしの実感です。ホモジナイズは殺菌とは違い、必須の処理ではありません。ホモジナイズ=脂肪球を潰して均質化していないノンホモ牛乳というものもあります。
わたしは超高温殺菌〜高温殺菌のホモジナイズド牛乳が苦手です。牛乳臭さが前面にでていて、味がのっぺりしているのがつまらない。給食では牛乳を「無」の顔をしてやっと飲んでいました。
普段、家で飲んでいるのはパスチャライズドのノンホモ牛乳(生活クラブ生協)です。スーパーで買うときでも低温殺菌のノンホモ牛乳を探します。
牧草の薫り、コクと甘さと奥行きがある牛乳
牛乳はあんまり得意ではないけれど、おいしい牛乳なら話は別です。
武蔵野デーリーさんでは月替わりで2、3種類のシングルオリジンの牛乳が飲めます。
東京都八丈島のゆーゆー牧場さんのジャージー牛乳(低温殺菌、ノンホモ)を飲んだところ、「なにこれうまああああああ!」と心の中で叫びました。牧場の一番草を食べた牛のお乳は、牧草の味がする。ちょっといい青汁のような風味を遠くに、ほのかに感じます。そしてもちろん素晴らしいコクと甘みよ。甘くないソフトクリームみたい。ジャージー牛、ありがとう😭
次に飲むのは北海道喜茂別の牧場タカラさんのホルスタイン牛乳(低温殺菌、ノンホモ)です。
ジャージーを飲んだ後だと「あっホルスタインの味!」とよくわかります。普段飲んでいる生活クラブ生協の牛乳に条件としては近いのですが、やはり違う味がします。爽やかな風味がありつつさらっと飲みやすい口当たりで、牛乳好きな人ならごくごく飲んじゃうのでは?
牛を大事にする
武蔵野デーリーさんで紹介されているどの牧場の生産者も、牛を大事にしています。「大事にする」とは、牛に極力ストレスをかけないように工夫を凝らすことです。
放牧はもちろん、牛舎と牧草地を自由にいったりきたりできるようにしたり、飼料、牛舎の設計と管理、汚物の処理タイミングなど、牛が快適に安心して過ごせるように手をかけています。
牛乳を出してくれるのは牛ですから、牛こそがいちばん最初の生産者ともいえます。その牛をこのように「大切にする」のは、近代の工業化された農業には反する方向なのかもしれません。でも、味がすべてを物語っています。アニマルウェルフェアの観点からも、こういう生産者はもっと評価されほしいです。
さてこうなると気になるのはこのクラフトミルクスタンドを始められた木村充慶さんです。
ぜひ下記リンクから木村さん親子の歩みを読んでいただければと思います。(連載です)
「親子で作るミルクスタンド ー 76歳の父が事故ったので「ミルクスタンド」の夢をかなえることにした」
上記のページの下にある連載一覧は、直近の記事が表示されています。震災で被災した能登半島の牧場についての記事なので、もちろんそれも読んでいただきたい!とはいえ、ミルクスタンドについてかかれた記事はこの一覧ページからのほうが探しやすいです。
武蔵野デーリーさんの所在地はこちら↓(GoogleMap)
https://maps.app.goo.gl/CsZTWkPBp9RQV1CbA
昨日はお天気が悪くてお客様がまばらだったので、木村さんのパートナー:望さんから、今後やりたいことのお話などもうかがうことができました。応援しています!なにか力になれることがあれば声かけてください!という気持ちでむんむんしながらお店を後にしました。