祖母の黒豆レシピ

黒豆・里芋・栗きんとん

お節料理に欠かせない黒豆ですが、市販の黒豆は甘過ぎたり塩気が妙な具合に舌に残ったりします。好みの味付けのものになかなか出会えません。でも、豆を炊くのは根気が要るので、この年齢になるまで黒豆には手を出さずにいました。

黒豆は母方の祖母の炊くものが子ども心にいちばん美味しく感じられました。
風味はもちろん、食感が絶妙だったのです。柔らか過ぎずほどよいかたさで、噛むと歯に「ちぎっ」とした歯応えが伝わる。あの歯応えが好きで、「黒豆のタッパーをかかえて一人で食べたい」と思うほどでした。

そんな祖母の黒豆レシピも、自家に収めておいただけではわたしの代で終わってしまう。
そう思うと切なくなったので、母に頼んでレシピに書き起こしてもらいました。
元のレシピは料理をする人にしか伝わらないようなざっくりした内容でしたので、今回、わたし自身が作りながら情報を足しました。途中で煮汁を吹きこぼれさせたり焦げつかせたりしながら、3日がかりのレシピを完走しました。

材料

  • 黒豆 2カップ
  • 砂糖 2カップ〜2.5カップ(豆と同量か少し多めぐらい)
  • 酒  大さじ3
  • 重曹 小さじ1〜2
  • 醤油 小さじ1
  • 赤ワイン 70-90cc
黒豆は一晩(8時間以上)水に浸けておく

黒豆のレシピ

①豆をたっぷりの水につける。酒大さじ3をここに加え、一晩浸けておく。
②新しい水に換え、重曹(小さじ1〜2。新豆なら小さじ1で十分)をいれて水から茹でる。中火〜中弱火推奨。
 豆をつまんで親指と小指でキュッと押したら潰れる程度に柔らかくなるまで煮てから湯を捨て、新しい湯で湯洗いし、湯を切る
(今年の北海道産の新豆(割と小粒)は45分ほどで柔らかくなりました。豆は、異なる場所から三つ四つ拾い上げて、流水でざっと流してから指で押してみてください。豆によって固さに差があります。固い豆がいたらもう少し煮ます。砂糖を加えた後には黒豆はどれほど煮ても柔らかくなりませんので、ここの見極めが結構大事です)

※沸騰すると重曹のせいで泡風呂みたいに泡が猛烈な勢いで盛り上がります。その泡はアク掬いなどでとりのぞきます。その後はこれぐらいの泡立ちになります。

③豆1:水2ぐらいの割合で水を注ぎ、砂糖の1/2量をいれて紙の落とし蓋をして中火で加熱。沸騰したら弱火にして(煮汁がふつふつしている程度の火加減で)30分煮て冷ます。
④完全に冷めたらまた弱火にかけ静かに沸騰させ、煮汁がふつふつしてきたらトロ火で30分煮て冷ます。この工程を1日に2〜3回繰り返す。
⑤鍋のまま一晩休ませておく

下茹でにつかった重曹の成分が残っていると苦くなるので、鍋も新しく別なものにします。

⑥残りの砂糖を加えてまた弱火にかけ静かに沸騰させ、煮汁がふつふつしてきたらトロ火で30分煮て冷ます。この30分煮る→冷ます→完全に冷えたらまた30分煮るという工程を2回ぐらいする。(煮汁が少なくなったら水を足してよい)
⑦また一晩休ませる
⑧弱火にかけ静かに沸騰させ、煮汁がふつふつしてきたらトロ火で30分煮る。その後、醤油(小さじ1~2)、赤ワイン(70~90cc)を入れて煮返して仕上げる


なにもしないと茶色い仕上がりになります。黒く仕上げたい場合は鉄たまごなど入れてください

下茹でと鍋について

今回、北海道産の黒豆の新豆を使いました。
新豆なのに小さじ2の重曹をいれたせいでかとてもやわらかく仕上がり、柔らか過ぎた感があります。
また、ステンレス製の、底が分厚いお鍋で炊いたら最後になって焦げつきました。あわてて火からおろし、ストウブに移して仕上げました。こういう時のために濡れ布巾を待機させておくとより安心だと思います(焦げはじめた時点でなら、火からおろして濡れ布巾にのせることで被害を最小限にくいとめられます)。

火力について

私の使っているコンロは「ホワロ」というガステーブルで、火力調整がたいへん大味で細かな調整ができません。最大(強火)ー中強火ー中火ー弱火の四択で、トロ火にならないのです。そのせいもあって、お豆を炊くのは毎回ドキドキします。お豆を炊く時にはトロ火が理想ですね。IHなら安定した低音で加熱できると思います。

このレシピについて

この黒豆レシピは、家族のために三度の食事の支度をしながらお節料理もつくるという、昭和の主婦の忙しい台所で生まれたものです。そのせいもあって、ちょっと炊いては火からおろして冷まし、また炊いては冷ましという工程になっています。
いっぺんに仕上げたい方には不向きなレシピですが、なんども冷ましては加熱する工程で味がしっかりとお豆にしみわたります。

下茹での段階で皮が脱げたり身が崩れたりしたものがあり、それらは煮汁が濁るのでとりのぞきました。だけど味が悪いわけではないので、雑穀ごはんにまぜていただきました。美味しかったです。

黒豆の色が茶色くなる

市販の黒豆は真っ黒ツヤツヤで、皮もぴーんとしています。家庭ではさすがにあんなふうには仕上げられません。
黒豆の色素、アントシアニンは加熱するとお湯に流れ出ます。そして茶色く仕上がるのがなんとなく釈然としません。錆びた釘を入れろとか言いますが、今時錆びた釘など入手困難です。鉄分補給用の鉄たまごみたいなものと一緒に炊くとか、鉄製の鍋で炊くとか工夫してみても、やはり茶色くなります。これはもう仕方ないのだろうと思います。
煮汁に浸しておくと、色素が少しは戻ります。どうしても黒くしたいなら、人工的に食用色素で色をつけるのがいいかもしれません。

食用色素(天然由来) 黒色 5g

3日がかりで作るんですから、ご自身の納得ゆく姿の黒豆にしていただければと思います。