昔、猫ベッドを作って売っていました。
そのころからスマホの電話番号を変えていません。ごく稀に昔のお客様から「また作ってもらえまいか」という電話がかかってきます。あいにく、布以外の資材が現在では入手不可能なので基本的にはお断りしています。
ただし、知人経由での問合せや、わたしも少なからず思い入れのある猫さんのための場合は、ご相談となります。お客様は以前の商品と同等のものを期待されているわけです。なので、以前と同じクオリティのものは作れないがそれでもよいかどうか、確認させていただくのです。
10年探してくださったお客さま
今回は猫友さん:アニマルコミュニケーターの赤ツナギさん経由でお問い合わせがありました。
赤ツナギさんとはわたしが関西に住んでいた時からのおつきあいです。
彼女は猫の保護活動を個人でしています。彼女が保護した子猫のうち1匹:ふうちゃんを譲渡したのが、今回のご依頼主のMさまです。Mさまはふうちゃんを大層かわいがっていらして、わたしも時々ブログを拝見しては心が温かくなるような気持ちでおりました。
ふうちゃんが亡くなってから、Mさまはご自身の年齢を考えて猫との暮らしを諦めていたそうです。が、見かねた親戚の方が後見人になってくれるということで、また新たに猫さんを迎えられたのでした。そのことを赤ツナギさん経由で聞いていてよかったなと思っていたところでの、まさかのお問い合わせでした。
10年も前にクローズしたお店のことを憶えてくださっているだけでもありがたいのに、諦めずに問い合わせをしてくださったことがとても嬉しかったです。
ミッション・資材を探せ
繊維の流行
元々使っていた資材のうち、中綿はとっくに製造中止です。猫ベッドの中綿の代替品を探すのに5日かかりました。
「わた」なんていくらでもあるでしょ?検索すればいくらでもでてくるでしょ?と思ったあなた。舐めてはいけません。
いわゆる手芸綿は猫ベッドには不向きです。布団わたとして販売されているものはなおのこと不向きです。素材の原材料の表示をチェックしたくても、それがインターネット上に記載されていない製品もよくあります。それに加えて、わたは実物を手にしてみないと質感がまったくわからない。試しに購入するにしてもギャンブルのようなものです。
あまつさえ、繊維にも流行りすたりがあります。10数年前にはわりと入手しやすかった素材の中綿が、今ではもう根気よく探さないとみつけられない状態でした。
業者は倒産していた
資材のうち最も重要な中芯の製造業者は、昨年倒産しました。確実に入手不可能です。(元々、個人相手の小口取引は例外的に対応していただいておりました。半端資材を分けていただくという感じです)
自分用に手元に残しておいた最後の中芯を使うことにしました。Mさまには10年待っていただいたのですし、新しい猫さんを迎えた喜びに華を添えられるなら喜んで使いましょう。
完成
縫い始めれば身体が覚えているので、さくさくと作業は進みました。
代替品として見つけた中綿もなかなかよさそうです。ふっくら柔らかく、軽く仕上がりました。
いざ発送!となって、発送するための段ボールがないことに気がついてギャッとなりました。縦横比が若干特殊なサイズなので、適当な段ボールを再利用することができないんです。ショップ時代はアースダンボールさんに依頼して作ってもらっていました。
結局、頑丈なクラフト紙の大きな袋を再利用して発送できました。
猫ベッドお届け後の様子
無事にお届けできたのはよかったのですが、やんちゃ盛りの猫さんなので猫ベッド滞在時間は短いそうです(笑)
Mさまからのメールを一部ご紹介します。
さつき君を迎えて一か月になりました(生後105日)
体重は2.2kgで成長が著しいです。
先週はキッチンシンクを制覇、今日はキャットタワーからカーテンレールをクリアーしました。
ある程度成長して落ち着くまでは目が離せませんが、楽しい毎日ではあります。は~・・・
ケージの2段目に置いたベッドを蹴落として、その下に潜ったりしているようです。
猫ベッドには固定用のループもつけてあります。でも、活発な猫さんの場合はむしろ留めておかないほうが安全なんですよね。ベッドの生地に爪が引っかかったまま身体だけ下に降りたりしたら、大変なことになります。Mさまはよくわかってはりますなぁ。
こうやって使ってくれている様子や、それを嬉しそうに見守る飼主さんの様子が伝わってくるとわたしも嬉しいです。そらまめ屋最後のベッドとなりましたが(中芯が完全に払底)、わたしは大満足です。最後の締めくくりに相応しいご依頼をいただいたような気がします。Mさま、赤ツナギさん、ありがとうございました。
別な中芯業者を探し出せれば、たまに猫ベッドを縫うのも楽しいでしょうね。繊維業界に詳しい方、心当たりがあったらお知らせください!